春香伝

2001年3月3日
イム・グォンテク監督
春香伝とは韓国の古典的な恋愛物語で、本国ではすでに何回も映像化されているらしい。ストーリーは確かに若い男女の恋物語+水戸黄門的勧善懲悪、悪代官へへー、めでたしめでたしという大衆的なものである。しかしその物語を、パンソリという韓国の伝統的口承芸術とからめあわせることによって芸術作品として昇華させている。もともと春香伝自体、パンソリ(素人目には日本の狂言に少し似ているように感じられる)のためにつくられたものらしいので、歌と演技が完全に調和したときの美しさは素晴らしい。
主演二人はこれがデビュー作らしいが、初々しさと演技のつたなさがかえってエロスをかもし出している。東アジア的な、湿度のあるエロさともいおうか。「青いパパイアの香り」のニュアンスに少し近いかもしれない。
脇を固める、下僕役、春香の母親役などを演じる俳優達の演技は諧謔性もあり、秀逸。
映像も息を飲むほど美しい。美しい自然と美しい男女、まさに眼福。

「荒木経惟の写真術」
『自分がカッコわるさを晒け出すことで、相手も晒け出してくれるんだよ』
『いろいろなものとか人とかと関わっていると、みんな考えてることとか感じてることとか自分とは違うから、それを排除しないで受け入れていけば、ずっと続いちゃうじゃない』

Before night falls

2001年3月2日
ジョリアン・シュナーベル監督
キューバを主な舞台にした、作家の一生の物語。映画を見に行ったというよりも、まさに人の人生をはじめから終わりまで見に行ってきた感がある。映画自体がやや長いし、話の展開的にもたつくところもみられるのだけれど、それさえも鑑賞後には、「人生」の一部であったような印象を抱かせる。
貧困の中に生まれた少年が、革命の混乱の中でやがて自分の性的嗜好、ゲイであることと、文学の才能と書くことへの欲望に気づいていく。青年期の部分の描写は退廃的で、ねっとりした質感がある。
中盤では、ホモセクシャルであることと彼の作品の反革命さのために投獄されてしまう。
主人公は、本来弱いのだろう。自殺しようとしても死に切れないし、終生母親の愛を心の何処かで求めつづけている。そんな彼が唯一こだわるのが「書くこと」であり、それだけが彼を動かしうるのだ。芸術家とは、ある種本人の才能に「動かされている」部分があるのではないか。彼の人生が幸せに満ちたものだったと思う人はいないであろうが、彼の才能は彼にとっての唯一のものであったのだ。
 

In the mood for love

2001年3月1日
ウォン・カーウァイ監督

「親密な二人だけの物語」と監督が公式HPでコメントしているとおりの、トニー・レオン、マギー・チャン、二人の演技派俳優による抑制されたテンポの物語。恋物語、というよりも愛の物語、である。
完全に二人だけの物語であるが、浮気している男女の伴侶同士、という設定なので、常に見えない他者が二人の関係に影を落としている。抑制があるからこそのエロスであり、抑制があるからこそより洗練された感情が湧き出でるのではないか。
 会話の端々まで注意が行き届いていて、魅力的な作品には無駄な台詞が存在しないことを実感。
 カメラワークも名人芸の域。ドイル名物、ゆれまくる映像は影をひそめているものの、登場人物のかき乱された心を暗示するような、微妙なスローモーション、ぶれは緻密に計算されたものなんだろうな。
 マギーチャンのゴッデスなプロポーションと絢爛豪華な衣装もすごい。

 どうしても失いたくない足枷ができたら、また見てみたい映画だ。
ロブ・ライナー 監督
「いや、そうは問屋が卸さないだろー。」というようなラブストーリーなのだが、マイケルダグラスのエロオーラが強すぎて、なぜか説得感が出てきてしまう。この人が大統領だったらこうなるのかもというイリュージョンをつくりだしたら、俳優の勝ちだもんね。うーむ、正に適材適所。
 一般庶民が思う「大統領の生活」=豪華なパーティー、分刻みのスケジュール、いきなりなヘリコプター、などなどが、これでもかー、とでてきて痛快。リアリティーないけど、エンターテイメントではある。


イリュージョン

2001年2月27日
リチャード・バック著
 今日は本当に晴れ上がって気持ちのいい空の日だった。やらなくちゃいけない課題はもちろんあるのだけれど、少しの時間、太陽の光が注ぐ西向きの窓の下にあるベッドによこになってのんびりしたくなって、実際のんびりしながら読んだ本。本も映画も、名作かどうか決めるのは自分の気持ち次第だから、その作品に向き合うときの気持ちの状態に、作品の評価がひっぱられるのはある程度しょうがない。回りの環境も含めて、廻り会いの「縁」なのだし。
 つまりつまり、青空の下で読んだこの本は、最高の一冊に、なりました、ということ。

 完璧であるためには一秒ごとに変化しなければならない

 すべて、自由なんだ。

天涯

2001年2月26日
沢木耕太郎著
写真技術はご本人のおっしゃるとおりプロのレベルではないのだろう。けれど、心惹かれる写真が、ある。青が印象的だ。青は旅の色であると思う。人間関係の糸からしばし離れて、空を見上げる。どの旅においても、胸が痛くなるぐらいの青い空を必ず一度は見てきた。天涯にして初めて、天蓋に抱かれることができる。

アニーよ銃を取れ

2001年2月23日
 ミュージカルを見に行く。全米公演という形で、地方都市にも1,2ヶ月に一度くらい回ってくるのだ。ブロードウェイの舞台を踏んでいる俳優さん達なので、迫力はけして引けを取らないと思う。歌いだすと空気が変わるのだ。声にきちんとした芯を感じる。
会場が小さくて、値段がNYで見るより安いのも嬉しい。
 歌あり踊りあり、けれど最後はハッピーエンドの古典ミュージカルの再演なので、家族連れも多くてなんだかほのぼのムード。
「なんかこれ、聞いたことあるなー。」という曲もおおくて、楽しい気持ちでいっぱいになった。
 劇自体のノリがなんだか吉本新喜劇みたいなのがおかしかった。べたな笑いに一番どかんどかんきてたのもおばちゃんたちだったし。
 しかし、歌って普通の会話より聞き取るのが難しくて、完全に理解できなかったのが残念!一緒に行ったネイティブの子に後で解説してもらいながら、勉強不足を反省。

石川浩司さん

2001年2月22日
のHPを偶然見つけた。面白くてついついいろんなページをクリックしてしまった。石川さん、といっても「誰?」ってかんじだけど、10年ぐらいまえにいか天でデビューした「たま」の「ランニング」(本人談)の人だ。
その後どうしているのか知らなかったんだけど、日記を読むと、自分のやられたいことを楽しんでやられているようで、読んでるこちらもうきうきしてきた。
それにものすごく文章が上手だ、と私がいうのもおこがましいが。リズムがあるし、とても近い関係の人の日記を読んでいるような気分になるのだ。奥様ととっても仲がよろしいようでそれもうらやましい。40代になってからもこんな風にかわいく愛されたいなあ。
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ハンニバル

2001年2月21日
監督リドリースコット
評論家の間でも賛否両論な話題作。とにもかくにも自分の目で見てきた。
かなりの資金を使って、きちんと計算されてつくられた映画だ。青みがかった映像や感情をどこか不安定にさせるようなカットの挿入、そして一条の光まで映画を構成する不可欠の要素として機能している。
「羊たちの沈黙」を見たのは中学生のときで、ぼんやりとしか覚えてないので比較はできないのだけれど、前作の人間関係さえ鑑賞前におさえておけば、この映画だけでも十分満足できると思う。
 今回のクラリス、ジュリアン・ムーアでかえってよかったのではないだろうか。彼女の細身なで青白い体と、精神の強靭さをあらわせる瞳が、FBIの有能な特別捜査官となった10年後のクラリスにふさわしい。2回の「クラリス・スターリング、FBI」という絶叫は彼女のマニフェストであろう。
 レクター博士にはヨーロッパの重苦しい石の街並みの方が似合う。 
 前作が評価されているから比較されていろいろ言われるのだろうが、見てそんはない映画だ。
 ところで、豚の演技指導ってどうやるんだろ?

コリアンアメリカン

2001年2月20日
アジア地域学という講義を受けていて、そこで幼い頃にアメリカに家族で移住した韓国系アメリカ人の友人ができた。ものすごく知的で、努力家で、コンピューターにも詳しかったりしてかっこいい。日本に興味があって、9月から一年間留学を考えているらしい。
彼女の日本観は、韓国育ちの韓国人の友人達とも違い興味深い。韓国人としての自覚はありながら、第三者の視点なのだ。「日本と韓国はやはり似ている」とさらりという韓国の人ってまわりにすくない。
日系アメリカ人の人達も、日本育ちの日本人とはまた違った視点を持っているのだろうが、日本ではなかなか紹介される機会がない。へんなアメリカかぶれの留学帰りの人の意見よりよっぽど聞きがいがありそうだが。
・・・あ!わたしも帰国したら変な留学帰りとみなされるのかな??

ダブルジョパティー

2001年2月19日
監督ブルース・ベレスフォード
ジ・アシュレイ・ジャッドムービー。彼女はすごく魅力的。冒頭のシーンの「アメリカの典型的アッパー階級」な姿から、スッピンで絶望している姿、息子のための必死のアクション姿まで、どれもとても美しい。
 でも、この映画の見所、それだけ。脚本がご都合主義で全然だめ。そんなとこにカギないだろ!指名手配中なら飛行機乗れないだろ!!美人だったらそんなになにもかもうまくいくのかー!!!
 「ダブルジョパティー」という題材を上手くつかいこなせてなくて、かえってふりまわされてるみたい。もともと、旦那だって自分の殺人事件なんてこみいった芝居うつ必然性ないもん。
 トミーリージョーンズはもはや銭型のとっつぁん化してる。ルパーン。

テッド・デミ監督。
 NYから故郷に帰ってきたしがないピアニスト、ウィリー(ティモシー・ハットン)を軸にした、二十代後半という結婚を意識しなければならない年頃に達した人々の群像劇。
 「結婚という選択に踏み切れない」男達と、同じ年ながらずっとしっかりした自分の視点、自分の恋愛感をもっている女達を描いたものだろう。しかし、一人一人を深く描写できていないためか、まだ適齢期には少し早い私にはいまいちぴんとこなかった。群像劇っていかに一人一人を丁寧に描きつつ、映画の枠に収めるか、という難しさがあるよなー。 なので、その点よりもウィリーからみた、田舎の描き方が興味を引いた。田舎の人間関係の濃さって暖かいのだけれど、長くいると絡め取られてしまって身動きできなくなってしまうような気がする。デッドロック、というのはいいすぎにしても、キャリアビルディングとか、望むべくもないもん。その辺が上手く現れてる。私も田舎が嫌で上京したので。
 あと、ナタリー・ポートマン、めちゃくちゃ綺麗だったけど、大人の男の人が好きそうな、現実感ない女の子のやくだったのが、ちと残念。でも、彼女の経歴見てると、本人もこんな感じなのかも、というきもする。
  
 今クォーター取っている、パブリックスピーキングの授業で、講演会を2週に1回聞きにいって、レビューを書くという課題がでています。(私は今、一年間の交換留学で海外にいます。)
 今日はブリティッシュコロンビアのネイティブの方がきて、代々彼の部族の共有の土地だった原始森を樹木の、大手木材会社による伐採の中止を求める講演を聞きに行きました。
 この種の講演は、妙にスピーカーだけが熱くなって聴衆をおいていってしまうことがままありますが、彼の抑揚の効いた実直な語り口は説得力がありました。
 日本もカナダからは相当木材を輸入しているって、中学の地理でやったよなー、(まー、7,8年も前の話なんですが)と思うと無関係ではないでしょう。
 グローバリゼーションがまったき正のものとしてもてはやされていますが、相互依存が深まれば、私達が斟酌しなければいけない人々も世界大に広がるのではないでしょうか。背負わなければいけない人の痛みも増えるはずです。
 

ああ、日記だー。

2001年2月16日
日常のことはあんまり書かないけど..
 この間、トイストーリーとトイストーリー2を続けてみました。うわー、今まで先入観で避けてたのがもったいなかったです。
【トイストーリー】
完璧娯楽なアニミズム+デジタルアニメコラボレーション!
 カーボーイ人形ウッディと、宇宙飛行士系人形、バズがメインキャラなのですが、脇を固める人形もいちいち設定が濃い。子供が見たら素直に楽しめるし、大人が見たらにやりとできます。2のスターウォーズネタには笑わせてもらいました。
 本当の「ファミリームービー」って「子供向け」のことじゃなくて、家族全員が自分達のレベルで楽しめる映画のことなんだなー、と実感です。
 「自分のおもちゃは本当は生きてるんじゃないだろうか?」て小さいときに私も空想しました。小さな頃の、わからないことでいっぱいだったちいちゃな世界を思い出せます。

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